タイトル
第45巻第3号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (366K)
Article in Japanese

─ 第19回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─

N2非小細胞肺癌の治療戦略:手術(Initial Operation)+αの可能性について

吉野 一郎1, 山口 正史1, 山崎 宏司1, 亀山 敏文1, 米谷 卓郎1, 小副川 敦1, 饒平名 知史1, 坂井 修二2, 前原 喜彦1
九州大学大学院 1消化器・総合外科, 2臨床放射線科

背景.近年,IIIA-N2期非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)に対する術後補助化学療法の有効性が示され注目されている.しかしながら多様なIIIA-N2期NSCLCの中のどのようなポピュレーションがその適応となり得るのか,またレジメンの工夫(新たな臨床試験)など議論されるべき問題点も多い.目的.IIIA-N2期NSCLCに対する外科療法成績の変遷・現状を解析し,術後補助化学療法の現段階における適応,および将来展望について考察する.方法.1974年から2003年に切除されたN2期NSCLC 293例の予後を切除完遂率,cN分類,年代,導入化学療法,補助療法について検討した.なおN2の術前診断として1980・1990年代はCTを,2000年代は縦隔条件高分解能CTを用いた.結果.1)全例の5年生存率は21%,中間生存期間は24ヶ月であった.完全切除された174例の5年生存率は30%であったが,不完全切除119例では8%と不良であった(p<0.0001).2)不完全切除の原因として胸膜播種42例(35%)と縦隔リンパ節転移巣の節外浸潤41例(34%)が主な理由であった.3)年代別の完全切除率は70・80・90・00年代で各40・52・68・90%と経時的に高値となり,各年代における3年生存率は各13,35,31,70%と経時的に上昇していた(p=0.0011)が,完全切除例では各年代間に差はなかった.4)単一ステーションN2で完全切除された88例の5年生存率は36%と良好であった.5)導入化学療法(CDDP/CPT:1990年代後半以降)を受けた13例は何れもbulkyまたはmultiple N2であったが,すべて完全切除され3年生存率75%と良好であった.6)多変量解析にて,完全切除の有無が最も強い予後因子であった.考察.1)IIIA-N2期NSCLCにおいて,手術を含む集学的治療を考慮する場合,完全切除可能例を効率よく選別できなければならない.2)縦隔条件高分解能CTは切除可能例の選択精度が良好である.3)切除可能単一ステーションN2例は術後IIIA-N2期と同等な予後を呈し,補助化学療法の臨床試験の対象となり得る.4)Marginally resectable cN2に対しては導入化学療法+手術が期待される.
索引用語:非小細胞肺癌, 術後補助化学療法, III期, 完全切除

肺癌 45 (3):267─274,2005

ページの先頭へ