タイトル
第45巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

化学放射線療法を契機に抗利尿ホルモン不適切分泌症候群を発症した顆粒球コロニー刺激因子産生肺腺癌の1例

花岡 淳1, 大内 政嗣1, 井上 修平1, 手塚 則明2, 澤井 聡2, 藤野 昇三2
1独立行政法人国立病院機構滋賀病院呼吸器外科, 2滋賀医科大学呼吸器外科

背景.肺癌患者の治療経過中に低Na血症が出現することがあり,稀ではあるが抗腫瘍薬投与により抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)が原因となることがある.症例.71歳男性.胸部異常陰影と顔面・上肢の浮腫で入院となった.胸部CTで右上葉の腫瘤影と縦隔リンパ節腫大を認め,経気管支肺生検で低分化型肺腺癌の診断を得た.入院時より末梢血白血球数増多を認め,血漿顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)高値よりG-CSF産生腫瘍と診断した.放射線療法開始2週後にnedaplatinとdocetaxelによる全身化学療法を開始したところ,9日後に傾眠傾向が出現した.血漿浸透圧低下を伴った低Na血症と血漿ADH上昇を認め,原因となる他疾患もないことから抗腫瘍薬によるSIADHと診断した.Na補充と利尿剤投与後,水制限を行うことで症状は改善,その後は低Na血症の再発を認めなかった.結論.中枢神経症状を有する低Na血症例では緊急処置が必要であるが,薬剤性SIADHも考慮しながら原因を鑑別することが重要である.
索引用語:抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH), 血漿顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)産生肺癌, 腫瘍随伴性症候群, 腎性Na喪失症候群

受付日:2004年10月5日
受理日:2005年4月21日

肺癌 45 (4):357─362,2005

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