タイトル
第45巻第6号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (92K)
Article in Japanese

─ 総説 ─

肺癌に対する光線力学的治療―光線力学的治療の進歩と非小細胞肺癌に対する適応拡大―

原田 匡彦1
1東京医科大学外科学第一講座

中心型肺癌の治療戦略として機能温存を考慮に入れた内視鏡レーザー療法は,処置後の肺機能低下が少なく低侵襲治療法としての地位を確立しつつある.中でも光線力学的治療法(photodynamictherapy;PDT)は,腫瘍を選択的に壊死させうることから,安全性が高くまた他の治療法とのcombinationも容易で応用範囲が広いため期待されている治療法である.PDTは腫瘍親和性光感受性物質(フォトセンシタイザ)とレーザー光によって引き起こされる光化学反応を利用した治療法で,癌組織中に活性酸素を生成させ,その力によって癌組織を壊死させるものである.予め患者に薬品(Photofrin®)を静注し,癌組織と正常組織における薬品濃度差が最大となる48~72時間後に,薬品の励起波長と一致する波長(630 nm)のレーザー光を照射すると,これによって癌細胞に取り込まれた薬品が励起され,薬品の持つエネルギーは癌組織中の酸素に移乗して一重項酸素(活性酸素)を生成するが,この活性酸素の殺細胞性によって癌細胞を壊死させるのが本法の原理である.現在,日本における呼吸器領域でのPDTの適応は,手術等の他の根治的療法が不可能な場合あるいは肺の機能温存が必要な患者に他の治療が使用できない場合で,かつ,内視鏡的に病巣全容が観察でき,レーザー光照射が可能な病変とされており,早期肺癌(病期0期または病期I期肺癌)のみに限定されている.教室では1978年からの基礎実験を経てPDTの臨床応用を開始し1980年には世界で第1例目の中心型肺癌の気管支鏡下PDTを行った.2003年12月までにPDTを行った早期肺癌症例は221病巣に達し,84.6%の完全寛解(CR)を得た.Retrospective analysisの結果より,根治するための絶対的適応基準として腫瘍最大径が1 cm以下,腫瘍遠位端確認可であることが極めて重要で,これを遵守すればPDT単独治療でも根治が見込めると考えている.本論文では近い将来中心型早期肺癌に対する治療戦略の中心となるであろうPDTについて,治療前適応評価(蛍光内視鏡検査,経気管支内視鏡エコー),治療の方法・コツ,臨床成績について紹介し,さらに適応拡大に向けた進行癌に対するトライアルについても紹介する.
索引用語:光線力学的治療法(PDT), 非小細胞肺癌, 肺門部早期肺癌, フォトフリン, レザフィリン

肺癌 45 (6):687─692,2005

ページの先頭へ