タイトル
第45巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

気腫性肺嚢胞壁に発生した肺癌切除例6例の検討

田嶋 裕子1, 小野 憲司1, 菅谷 将一1, 安田 学1, 竹之山 光広1, 森田 勝1, 花桐 武志1, 大崎 敏弘1, 杉尾 賢二1, 安元 公正1
1産業医科大学第2外科

背景.気腫性肺嚢胞患者に肺癌が発生する頻度は高く,肺癌発生の危険因子の一つと考えられている.方法.1991年から2004年までに切除した原発性肺癌922例のうち,胸部CTで嚢胞形成を認め,その嚢胞壁から発生したと考えられた肺癌6例について,その画像的特徴や臨床病理学的特徴を検討した.結果.胸部CT所見は嚢胞壁の不整形陰影が1例,嚢胞壁の壁肥厚のみが1例,嚢胞壁内に突出する腫瘤陰影が2例,嚢胞壁から肺内へ進展した腫瘤陰影が2例であった.肺嚢胞の存在診断から,肺癌の確定診断に要した期間は3例では同時であったが,他の3例は21ヵ月,48ヵ月,71ヵ月であった.術前に組織学的診断が得られたのは1例のみで,他の5例は術中迅速病理診断にて確定した.組織型は中分化腺癌が3例,低分化腺癌が2例,大細胞神経内分泌癌が1例であった.予後は,大細胞神経内分泌癌症例が術後4ヵ月で再発したが担癌生存中,また,1例他病死した以外の4例は,無再発生存中である.結論.胸部CTにて嚢胞壁の変化を認めた場合は精査を行うこと,確定診断が得られない場合でも肺癌が疑わしい時には積極的に外科治療を考慮することが肝要である.
索引用語:肺癌, 肺嚢胞, 肺気腫, 予後, 手術

受付日:2005年2月28日
受理日:2005年8月3日

肺癌 45 (6):717─722,2005

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