タイトル
第45巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

著明な炎症反応を伴った紡錘細胞型肺多形癌の1例

村田 修一1, 北川 正信2, 松井 一裕3
1氷見市民病院外科, 2北陸中央病院病理, 3富山医科薬科大学第一病理

背景.新WHO分類の多形癌にはいくつかの異質の癌が含まれていて,問題がある.症例.症例は74歳男性.73歳時健診の胸部X線写真にて右上肺野に空洞性病変を指摘された.1年後陰影の増大がみられ,気管支鏡下細胞診ではClass V,non-small cell carcinomaと診断された.このため,右上葉切除およびND2aのリンパ節郭清を施行した.切除標本では右S1に最大径2.5 cm大の腫瘤があり,その中心から末梢側にかけて出血を伴う梗塞を認めた.組織学的には多数の核分裂像を示す多形紡錘形細胞の増殖からなり,同時に著明な炎症反応の混在があり,病態診断が困難であった.免疫組織化学的に腫瘍細胞はepithelial membrane antigen(EMA)が明らかに陽性であり,carcinoembryonic antigen(CEA)は陰性,cytokeratin(AE1/AE3)はごく一部にのみ陽性であった.米国Armed Forces Institute of Pathology(AFIP)の見解を仰ぎ,紡錘細胞型多形癌と最終診断した.半年後に腰仙椎に転移し,その2ヶ月後には脳転移で死亡した.結論.著明な炎症反応を伴った紡錘細胞型多形癌の1例を報告し,多形癌には肉腫成分の細胞異型度およびその占有率(例えば50%以上)が考慮されるべきことを主張した.
索引用語:肺多形細胞癌, 紡錘細胞癌, 炎症反応, 免疫組織化学

受付日:2005年3月11日
受理日:2005年8月17日

肺癌 45 (6):755─759,2005

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