第45巻第7号目次 | Japanese/English |
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─ 総説 ─
新しい抗癌剤―分子標的治療―
武田 晃司11大阪市立総合医療センター臨床腫瘍科
非小細胞肺癌に対する分子標的薬として,上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるゲフィチニブ(イレッサ®)とエルロチニブ(タルセバ®)が臨床応用され,いくつかの臨床試験の結果より,重要な知見が明らかにされつつある.ゲフィチニブは我が国で世界に先駆けて2002年7月に承認され,すでに多くの患者に投与されているが,急性肺障害による死亡例が相次ぎ,社会的問題にまで発展した.一方,エルロチニブはセカンドライン以降の進行非小細胞肺癌患者を対象にしたプラセボとの比較試験(BR21)で,エルロチニブ群が統計学的に有意に生存期間の延長をもたらした.EGFR-TKIの奏効を予測する因子として今までに行われた臨床試験などの検討より,女性,腺癌,非喫煙,日本人等が挙げられていたが,EGFRの遺伝子変異がEGFR-TKIの感受性に関与しているとの報告がなされ,個別化治療へ繋がるものと期待される.最近の癌分子標的治療に関する分野の基礎および臨床研究の進展にはめざましいものがあり,さらに多くの知見が積み重ねられている.最も我々を驚かせたことは,BR21と同じ試験デザインで行われたゲフィチニブとプラセボの比較試験(ISEL)の結果が,ゲフィチニブの有意な生存期間延長を証明できなかったことである.また,EGFRの遺伝子変異については多くの研究がなされ,EGFR-TKIの効果予測因子として臨床に応用できることが示唆された.
索引用語:エルロチニブ, ゲフィチニブ, 上皮成長因子受容体, 非小細胞肺癌, 分子標的治療
肺癌 45 (7):793─799,2005