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第46巻第1号目次 Japanese/English

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─ 第31回画像診断セミナー ─

胸部エックス線写真,CTの正常像を見直す―Radiologic-Anatomic Correlation―

伊藤 春海1
1福井大学医学部放射線医学

目的.医学部学生を対象とした呼吸器画像診断学教育において,Radiologic-Pathologic Correlationの観点に立った異常所見の説明は効果的な教育技術であることは間違いない.しかし,それを生かすには正常像についても同じ観点での充分な教育が必要である.正常像からの逸脱を発見させることが,病態への理解につながるからである.そこで重要なのは異常像と同様,正常像もパターンでなく,既存構造のエックス線学的表現であることの理解である.そこで,過去6年間の福井大学での教育経験から,教える側も正常像に対してさらに進化した読影技術を持つ必要があると考え,以下の研究を行った.方法と対象.胸部エックス線写真,CTに見られる注目すべき幾つかの正常所見について,標本と画像の比較検討を行った.検討内容は,(1)上部胸椎と肋骨,(2)気管支壁影,(3)Left Hilar Lucent Zone,(4)奇静脈弓と大動脈弓,(5)奇静脈葉,(6)肺底における副葉間裂,肺区域間・肺区域内隔壁である.通常の標本肉眼像の他に,標本を用いたエックス線像やCTを用いた.結果と結論.いずれの内容も標本との比較・検討が有用であった.検討内容を医学部学生,放射線技師,放射線科医師,呼吸器系内科医を対象に適切な臨床例を含めて指導する機会を持った.最も多い感想は,標本観察の有用性と正常像が持つ奥深さの再認識であった.
索引用語:肺既存構造, 気管支壁影, 肺門, 奇静脈弓, 副葉間裂

肺癌 46 (1):49─57,2006

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