タイトル
第46巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

切除した肥厚胸膜に悪性胸膜中皮腫を認めた慢性膿胸の1例

松倉 規1, 小阪 真二1, 國澤 進1, 岡林 孝弘1
1高知医療センター呼吸器外科

背景.慢性膿胸にはさまざまな悪性腫瘍が合併することが報告されている.今回慢性膿胸に対し膿胸郭清術を行ったところ切除した肥厚胸膜に悪性胸膜中皮腫を認めた症例を経験した.症例.72歳男性.主訴は熱発.明らかなアスベスト曝露歴なし.既往歴に結核性胸膜炎あり.10年前まで慢性膿胸で近医に通院していたが熱発が出現し紹介入院した.胸部造影CTでは右胸腔は石灰化した肥厚胸膜に覆われた膿胸内容物で占められ造影剤の膿胸腔内への漏出を認めた.明らかな腫瘤は指摘できなかった.慢性無瘻性膿胸と診断し膿胸郭清,有茎広背筋弁充填,肺剥皮術を行った.膿胸内容物は石灰化した肥厚壁側胸膜に覆われた形で一塊として摘出された.病理学的に壁側胸膜の内腔面には腫瘍は存在せず外側面に大型異型細胞の浸潤を認め悪性胸膜中皮腫と診断された.術後炎症徴候は消失し退院したが癌性胸膜炎で再入院した.全身衰弱が進行し発症から4ヶ月の経過で死亡した.結論.慢性膿胸の診療に際しては胸痛や熱発等の自覚症状が出現した場合には悪性腫瘍の合併を念頭においた精査を行う必要があるが悪性腫瘍合併の場合の予後は不良であった.
索引用語:慢性膿胸, 悪性腫瘍, 悪性胸膜中皮腫

受付日:2006年2月2日
受理日:2006年3月23日

肺癌 46 (3):207─210,2006

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