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第46巻第3号目次 Japanese/English

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─ 第20回日本肺癌学会肺癌ワークショップ <セッションI> ─

マススペクトロメトリーを応用したタンパク発現プロファイリングによるヒト非小細胞肺癌発症の分子機構の解明

柳澤 聖1, 高橋 隆1
1名古屋大学大学院医学系研究科附属神経疾患・腫瘍分子医学研究センター腫瘍病態統御部門分子腫瘍学分野

目的.肺癌は日本の癌死亡の第一位を占め,年間約55000人以上もの生命を奪う.非小細胞肺癌は肺癌全症例の約80~85%を占め,外科的摘出術が施行されるが,5年生存率は50%に満たない.これまでの研究では,術後予後を正確に予測可能な成果は得られていない.近年,急速に進歩しつつあるプロテオミクス解析技術は,生体試料からタンパク発現解析が可能とし,ポストゲノムシーケンス研究の中核として注目され,生命現象や疾患要因の理解の為に応用されてきている.本研究では,ヒト肺癌のタンパク発現プロファイルと臨床病態の関連について解析を行った.方法.MALDI-TOF MSを応用し,150例以上の肺癌手術検体を用いたタンパク発現プロファイル解析を行った.バイオインフォマティクス解析により,臨床病態と関連を認めるピークプロファイルを探索した.結果.総計2600以上のピークを検出し,それらに基づいて腫瘍・正常肺間で有意差を認めるピークプロファイルを検出した.結論.質量分析器を用いた微量の組織試料からのタンパク発現プロファイル解析により,ヒト肺癌の分子病態解明のみならず,革新的な予防・診断・治療法の開発に向けた分子標的の同定にも有用である可能性を示した.
索引用語:非小細胞肺癌, プロテオミクス, 発現プロファイリング, 質量分析器, バイオインフォマティクス

肺癌 46 (3):231─236,2006

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