タイトル
第46巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

原発性肺癌cStageIAに対する胸腔鏡補助下と完全胸腔鏡下肺葉切除術の比較検討

山下 芳典1, 向田 秀則1, 森谷 知恵2, 江川 博彌2, 金子 真弓3
広島市立安佐市民病院 1外科, 2内科, 3病理

目的.10 cm前後の開胸創に開胸器をかけ,胸腔鏡はライトガイドとして使用した胸腔鏡補助下肺葉切除術(A群)と,4 cmの小開胸創には開胸器は用いず完全モニター下で施行した完全鏡視下肺葉切除術(P群)をretrospectiveに比較する.対象と方法.対象は非小細胞肺癌cStage IAで,A群42例,P群38例では,上葉の場合は上縦隔の,下葉では気管分岐部のリンパ節郭清を原則とした.両群ともに同様な手術操作とし,軟性鏡,バイポーラシザーズを使用した.結果.P,A群の順に平均値(検定結果)で結果を示す.手術時間248分,202分(p=0.0001),出血量146 g, 263 g(n.s.),在院日数8.0, 15.0日(p<0.0001)であった.リンパ節の郭清個数は,上縦隔リンパ節で11個,7.2個,分岐部リンパ節で4.7個,4.8個と同等であった.合併症は,5例の13.2%,11例の26.2%に発症し,その中では遷延性肺瘻が3例の7.9%,5例の11.9%であった.術後創部痛によるボルタレン座薬TMの使用量は15 mg,45 mg(p<0.001)であった.両群とも在院死亡,術後直接死亡は認めず,2年生存率には差を認めていない.結語.P群では胸壁への低侵襲化により術後創部痛は軽減した.手技上の工夫により操作性と安全性が確保されたが,さらに呼吸器外科を標榜する施設で普遍的に施行可能な術式が望まれる.
索引用語:原発性肺癌, 胸腔鏡下肺葉切除術, 手術侵襲

受付日:2006年3月3日
受理日:2006年6月19日

肺癌 46 (4):337─343,2006

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