タイトル
第46巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

滑膜肉腫の胸腔内転移に対し胸膜肺全摘術を行った1例

山根 正修1, 前田 宏也1, 南木 伸基2, 加地 充昌3, 山地 康文2
三豊総合病院 1胸部外科, 2呼吸器科, 3放射線科

背景.滑膜肉腫の肺転移は比較的予後不良であるが,積極的な転移巣の切除による手術効果は期待できると考えられる.しかしこれまでに胸腔内播種巣に対する手術の報告例はない.症例.26歳の女性.8年前に滑膜肉腫にて左大腿筋の広範囲切除を施行.7年後より腰部痛を訴えるようになり,鎮痛剤,リハビリによる加療を行っていたが次第に悪化した.CT検査にて左胸腔内を占める巨大な腫瘤を認め,滑膜肉腫の肺転移,胸膜播種と診断された.Ifosfamideによる化学療法を施行し腫瘤は縮小,左胸腔内以外には転移巣は認めず完全切除を目指し手術を施行した.胸膜肺全摘術を行い,癒着のある心膜,横隔筋の一部は合併切除し,肉眼的に腫瘍は一塊に切除しえた.摘出標本では横隔膜付近を中心とした胸膜播種による多発性結節病変を認め,肺内転移巣は明らかでなかった.病理組織検査では心膜,胸壁,横隔膜の表層部に浸潤像を認めた.術後経過は良好で,8日目に退院した.結論.術後6ヶ月目に右肺に転移を認めたが術後1年を経過した.QOLに対する手術効果はあったと思われるが手術適応の決定には慎重を要する.
索引用語:滑膜肉腫, 胸腔内播種, 胸膜肺全摘術

受付日:2006年3月20日
受理日:2006年5月2日

肺癌 46 (4):363─367,2006

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