タイトル
第46巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

長期間経過後に耳下腺及び肺に転移をきたした後腹膜原発Solitary Fibrous Tumorの1切除例

土屋 恭子1, 福瀬 達郎1, 里田 直樹1, 小川 博暉2, 雑賀 興慶3
大津赤十字病院 1呼吸器科, 2外科, 3病理部

背景.solitary fibrous tumor(SFT)は間葉系細胞由来の稀な腫瘍である.我々は原発巣切除後10年目と11年目に転移をきたしたと考えられる稀な症例を経験したので報告する.症例.75歳,女性.平成3年に後腹膜腫瘍を切除された既往のある症例であるが,平成13年6月頃より右耳下腺部の腫張を認め,CT上,22×20 mmの腫瘤を指摘された.同年8月に穿刺吸引針生検を行ったところclass IIであったため経過観察されていたが,平成14年のMRIで40×30 mmと増大傾向を示したため,腫瘍切除を行った.また同時期に,乳癌の術後の経過観察のための胸部X線で左上肺野に腫瘤影を指摘され,精査の結果,転移性肺腫瘍を疑って平成14年11月に左肺上葉切除術及び左下葉部分切除を施行した.病理組織診では核異型が強い分裂像を伴う紡錘型細胞がみられ,CD34,bcl-2ともに陽性であり,SFTと診断された.また,以前の標本と比較した結果,耳下腺腫瘍及び平成3年に切除された後腹膜腫瘍も同様の病理像を示し,最終的にSFTと診断された.結論.病理像及び時間的経過から後腹膜原発SFTからの耳下腺及び肺への転移と考えられた.SFTは潜在的に悪性とみなすべきであり,注意深い経過観察が必要である.
索引用語:孤立性線維性腫瘍, CD34, Bcl-2, 転移

受付日:2005年5月2日
受理日:2006年5月15日

肺癌 46 (4):369─374,2006

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