タイトル
第46巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

悪性腫瘍随伴網膜症(Cancer-associated retinopathy:CAR)を合併した肺小細胞癌の1例

新屋 智之1, 笠原 寿郎1, 藤村 政樹1, 曽根 崇1, 良元 章浩1, 中尾 眞二1
1金沢大学大学院細胞移植学呼吸器内科

背景.悪性腫瘍随伴網膜症(cancer-associated retinopathy:CAR)は腫瘍随伴神経症の一つで上皮由来の悪性腫瘍,特に肺小細胞癌への合併が多く報告されている.我々は肺小細胞癌に合併し,血清抗recoverin抗体は陰性であったが,腫瘍組織においてrecoverin抗原を証明した稀なCARの1例を経験した.症例.77歳,男性.2003年6月より視力障害を認め,網膜電図による網膜電位の低下と,多局所網膜機能解析による網膜全般にわたる著しい電位低下を認めたため,CARが疑われた.全身検索によって右肺下葉の腫瘤影と縦隔リンパ節腫脹が認められ,縦隔リンパ節生検により限局期小細胞肺癌と診断された.血清抗recoverin抗体は陰性であったが,縦隔リンパ節腫瘍組織の免疫染色によってrecoverin抗原が証明された.その後,carboplatin+etoposideによる化学療法および遂時胸部照射を施行し,完全寛解を得たが,視力の改善は認めなかった.結論.CARが疑われ,血清抗recoverin抗体が陰性の場合には,肺癌組織の免疫組織化学的検討によるrecoverin抗原の証明がCAR診断の一助となると考えられた.
索引用語:悪性腫瘍随伴網膜症, 肺小細胞癌, 抗recoverin抗体, 視力障害, 自己免疫

受付日:2006年4月4日
受理日:2006年8月4日

肺癌 46 (6):741─746,2006

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