タイトル
第46巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

原発巣周囲に広範なすりガラス陰影を呈した肺癌の1例

倉橋 康典1,2, 平井 隆1, 岡本 卓1
1福井赤十字病院呼吸器外科, 2日本赤十字社和歌山医療センター呼吸器外科

背景.周囲に限局性のすりガラス陰影を伴う肺癌をしばしば経験することがあるが,今回我々は原発巣周囲に広範なすりガラス陰影を呈した肺癌症例を経験したので報告する.症例.57歳男性.検診で胸部異常影を指摘され紹介となった.胸部CTで右肺下葉に直径25 mm大の充実性の腫瘤影と,その周囲に約80 mmの円形のすりガラス陰影を認めた.cT2N0M0,IB肺癌の診断のもと,右肺中下葉切除術+リンパ節郭清術を施行した.開胸時,下葉臓側胸膜にリンパ管怒張を認めた.上葉S2に肺内転移(PM),#11iリンパ節に転移を認め,最終診断は,低分化腺癌pT1N1M1(PM)であった.原発巣周囲のすりガラス陰影に相当する部分に悪性所見はなく,組織学的にリンパ管・毛細血管の拡張と肺胞腔内の赤血球・マクロファージが認められ,中枢の転移リンパ節が原因で起こったリンパ管うっ滞・うっ血による漏出液(限局性肺浮腫)の存在が示唆された.結論.原発巣周囲に広範なすりガラス陰影を呈した肺癌症例を経験したので報告した.本症例における広範なすりガラス陰影は中枢の転移リンパ節が原因の限局性肺浮腫によるものと考えられた.
索引用語:腺癌, すりガラス陰影, リンパ管うっ滞, うっ血, (限局性)肺浮腫

受付日:2006年7月31日
受理日:2006年9月26日

肺癌 46 (7):823─827,2006

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