タイトル
第47巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

下垂体への転移により中枢性尿崩症を発症した肺腺癌の1例

石黒 卓1, 笠原 寿郎1, 木村 英晴1, 安井 正英1, 藤村 政樹1
1金沢大学大学院細胞移植学呼吸器内科

背景.肺癌の脳転移は高い頻度で認められるが,下垂体に転移することはまれである.今回われわれは下垂体転移により中枢性尿崩症を呈した症例を経験したので報告する.症例.症例は78歳女性.1998年より糖尿病の加療のために近医へ通院していた.2006年2月,胸部X線写真で左上肺野に腫瘤影を指摘され,当科に紹介となった.3月に気管支鏡検査を施行し,経気管支鏡的生検によって肺腺癌と診断した.全身精査の結果,多発肺内転移,骨転移,および頭部MRI検査にて右後頭葉への転移を認め,病期はT4N3M1(IV期)であった.入院1週間前から食欲不振が強くなったため,4月に精査加療目的で入院した.患者は多尿,口渇,多飲を認め,血液検査や高張食塩水負荷試験,酢酸デスモプレシン投与後の反応および頭部MRI所見により,転移性の下垂体腫瘍および中枢性尿崩症と診断した.化学療法は尿崩症症状に対して改善を示さなかったが,酢酸デスモプレシン投与によって食欲不振および患者のQOLは著明に改善した.結論.尿崩症患者をみた場合には,転移性下垂体腫瘍を鑑別にあげることが重要で,これに対する適切な治療により進行癌患者のQOLを改善できることが示唆された.
索引用語:尿崩症, 肺癌, 転移性下垂体腫瘍

受付日:2006年11月8日
受理日:2007年1月17日

肺癌 47 (2):125─130,2007

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