タイトル
第47巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸腺腫との鑑別が困難であったT細胞型リンパ芽球性リンパ腫の1例

大内 政嗣1, 井上 修平1, 花岡 淳1, 五十嵐 知之1, 藤野 昇三2
1独立行政法人国立病院機構滋賀病院呼吸器外科, 2国立大学法人滋賀医科大学呼吸器外科

背景.前縦隔には胸腺原性,上皮性,胚細胞性腫瘍やリンパ増殖性疾患など様々な腫瘍が発生する.なかでもリンパ球優位型胸腺腫とリンパ腫との鑑別には難渋することがある.症例.65歳の男性.胸部単純X線検査で前縦隔の腫瘤を指摘され当科に入院となった.胸部CT写真上,前縦隔から左胸腔側に突出する腫瘤がみられ,胸腺腫の疑いで胸腺全摘術を受けた.術後の病理組織学的検査で正岡分類I期,リンパ球優位型胸腺腫(WHO type B1)と診断された.手術から約1ヶ月後に胸腹水,全身リンパ節の腫大および脾腫が出現し,再入院した.左鼠径部のリンパ節生検でT細胞性リンパ芽球性リンパ腫と診断され,全身化学療法を受けたが,多臓器不全のため死亡した.結論.前縦隔腫瘍において,リンパ球優位型胸腺腫が考えられる場合には,早急に強力な化学療法を要するリンパ腫も考慮し,腫瘍の組織学的診断に加えて,迅速かつ正確な確定診断に努めるべきである.
索引用語:縦隔腫瘍, 胸腺腫, リンパ芽球性リンパ腫, 胸腺全摘術, フローサイトメトリー

受付日:2007年2月5日
受理日:2007年5月1日

肺癌 47 (3):277─283,2007

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