タイトル
第47巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

術前化学療法により腫瘍マーカーが正常化し完全切除した胸腺未分化癌の1例

長門 芳1,2, 柴 光年1, 飯田 智彦1, 柿澤 公孝1, 佐藤 行一郎1, 藤澤 武彦2
1国保直営総合病院君津中央病院呼吸器外科, 2千葉大学大学院医学研究院胸部外科学

背景.胸腺癌は比較的稀な腫瘍であり,特に進行期症例では,その治療法は未だ確立されていない.症例.55歳男性.職場健診にて胸部異常影を指摘され当科紹介となった.胸部X線写真では左肺門部に巨大な腫瘤影を認め,CTでは前縦隔から左胸腔内に大きく突出する長径9.5 cmの腫瘤影を認めた.腫瘤は左腕頭静脈,大動脈,肺動脈起始部と接して存在しており,各々への浸潤を疑った.また腫瘍マーカーはAFP:24.9 ng/ml,NSE:26.0 ng/ml,CYFRA:34.0 ng/mlと高値を示しており前縦隔腫瘍の診断にて入院となった.入院後,経皮的吸引細胞診及び組織診を行い,胸腺癌(正岡III期)と診断した.CDDP+VNRによる化学療法を2コース施行したところ著明な腫瘍の縮小を認め,腫瘍マーカーも正常範囲となったため,腫瘍を左肺上葉とともにen blocに摘出した.病理診断は胸腺未分化癌であった.術後放射線治療及び化学療法を施行し,現在術後12ヶ月が経過したが再発なく,元気に社会復帰している.結論.進行期胸腺癌症例では,術前化学療法に外科切除術の併用が治療の1選択肢となる可能性が示唆された.
索引用語:縦隔腫瘍, 胸腺癌, 化学療法, 腫瘍マーカー, 外科治療

受付日:2006年9月7日
受理日:2007年6月13日

肺癌 47 (4):347─353,2007

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