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第47巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第22回肺癌集検セミナー ─

石綿関連疾患の調査研究と治療法の開発

中野 孝司1
1兵庫医科大学呼吸器内科

石綿(アスベスト)は珪酸塩よりなる6種の繊維状鉱物の総称であり,その構造はアスベストの毒性に関連している.高濃度の職業性曝露が少なくなった現在,多くの先進諸国では,肺線維症(石綿肺)が減少し,アスベスト関連胸膜疾患が増加している.中皮腫の発生とアスベスト曝露は深く関連し,最近,急増する傾向が見られ,今後10年以上はこの増加が続くと予想されている.アスベスト曝露はほとんどが職業上のものであり,青石綿を使用する造船関係やアスベスト工場周辺に中皮腫が多く発生する.2005年6月,兵庫県尼崎市のアスベスト取扱い工場において,多くの従業員のアスベスト関連癌死亡があり,工場周辺住民にも中皮腫が発生していることが公表され,一大社会問題となった.最も問題なのは,17%を占める曝露歴が明確でない中皮腫である.これらの原因にアスベスト工場周囲の環境曝露が関与しているのかどうかが問題であり,今,中皮腫の実態の調査が兵庫県尼崎市,大阪府泉南地方,佐賀県鳥栖市において行われている.中皮腫は治療に抵抗する極めて予後不良の悪性腫瘍である.びまん性発育を特徴とし,外科治療を困難にさせている.今までも標準的治療法の確立を目指す努力が続けられてきたが,最近,ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法による良好な奏効率と生存期間の延長が明らかにされている.こられを背景に,多施設共同臨床試験が計画されているが,これらの全国規模の臨床試験は,科学的な中皮腫登録を積極的に進めることにつながる.
索引用語:中皮腫, アスベスト, ペメトレキセド, 胸膜肺全摘術, 臨床試験

肺癌 47 (6):761─768,2007

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