タイトル
第47巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

癌細胞の細胞診断と細胞像の読み方―腺癌―

廣島 健三1
1千葉大学大学院医学研究院診断病理学

近年,肺癌の中で腺癌は増加している.肺癌の術前診断において,細胞診は生検とともに最も簡便で信頼できる有用な手段である.喀痰中に見られる腺癌細胞は,大きく,円形または多角形で,乳頭状あるいは球形のクラスターで,あるいは孤立性に認められる.細胞質は泡沫状であるか,ライトグリーンに淡く染色される.多量の粘液が存在すると,核を一方に圧排する.腺癌細胞の核は大きく,核のクロマチンは細顆粒状である.核小体は1個で大型,円形で,核の中央に認められる.核縁は肥厚している.気管支擦過標本や経皮的肺生検で得られる標本は,喀痰に比べて出現する腺癌細胞が多く,乳頭状のクラスターを形成するか,シート状に配列する.核のクロマチンは微細顆粒状で均等に分布し,増量している.核縁の肥厚は見られない.腺癌細胞と鑑別する必要があるものとして,異型腺腫様過形成,II型肺胞上皮細胞の過形成,マクロファージなどがあげられる.これらは核異型が軽度であること,出現する細胞数が少ないことなどで鑑別できるが,鑑別が困難なこともある.他臓器の腺癌の肺転移と原発性肺腺癌の鑑別は難しいことが多いが,大腸癌の肺転移など,鑑別ができることもある.
索引用語:肺癌, 腺癌, 細胞診, 異型腺腫様過形成, II型肺胞上皮

肺癌 47 (7):837─847,2007

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