第47巻第7号目次 | Japanese/English |
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─ 第21回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─
肺癌の分子病理学―発現解析による肺癌の分子腫瘍分類―
谷田部 恭11愛知県がんセンター遺伝子病理診断部
目的.腫瘍の発現プロファイルの比較に基づいた階層的クラスタリングは,全遺伝子の発現パターンを比較した分子生物学的分類ととらえることも可能である.そこで,肺癌における発現プロファイルをもとに,肺癌の分子生物学的分類について考察した.研究計画(方法).これまでに発表された肺癌における階層的クラスタリングを比較検討した.結果.肺癌はまず2つのグループに大別化され,その後に4大組織型に基づいたクラスターに分かれる.そのクラスター間の関係から見ると,小細胞肺癌と扁平上皮癌の違いは,腺癌クラスターの違いよりはるかに小さいことがわかった.また,発現分子の詳細な検討を行うと,この2つのグループは,その由来となる細胞型に大きく依存しているのではないかと考えられた.それは,少なくとも2つのうちの1つのグループは,末梢肺細胞から由来したと考えられる腺癌であったからである.そしてこの末梢肺細胞型腺癌にはEGFR遺伝子変異が特異的に観察され,臨床病理学的にも女性・非喫煙者に多いことから,特徴ある腫瘍グループであると推測された.結論.肺癌の分子生物学的分類から,細胞系の違いによる分子発がん機序の理解も重要ではないかと思われた.
索引用語:肺癌, 末梢細胞型腺癌, EGFR遺伝子変異, 分子生物学的腫瘍分類
肺癌 47 (7):909─913,2007