第47巻第7号目次 | Japanese/English |
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─ 第21回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─
肺腺癌の発生要因と生物学
野口 雅之11筑波大学大学院人間総合科学研究科
肺末梢に発生する腺癌の多くは肺胞上皮置換性に増殖する細気管支肺胞上皮癌(bronchioloalveolar carcinoma,BAC)を介して浸潤癌に進展すると考えられる.BACを含む小型肺腺癌を病理形態学的に分類する場合,置換性増殖群と非置換性増殖群に分けるのが合理的である.後者はどんなに小さくとも浸潤癌であるが,前者のうちBACは上皮内癌で予後が良いが,これに線維芽細胞の増殖巣が加わると予後が悪くなることがわかっている.この点についての研究は多数報告がある.たとえば形態学的検討では腫瘍内の線維化部分における線維芽細胞の増生巣の割合は予後と良く相関する.分子病理学的にはBACでは特徴的にBax inhibitor-1の発現が高く,epidermal growth factor receptor(EGFR)の変異率も高いが逆にp16遺伝子のプロモーター領域の過剰メチル化は認めない.これらの違いはBACを構成する腫瘍細胞が浸潤癌のそれと明らかに性質の異なる腫瘍細胞であることを示している.
索引用語:肺腺癌, 野口分類, 予後, OCIAD2
肺癌 47 (7):921─925,2007