タイトル
第48巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

肺癌手術における侵襲の軽減

坪田 紀明1
1兵庫医科大学胸部腫瘍学講座

最近の癌に対する手術療法は以前と様相を異にするが,そこには領域を越えた共通の3主題が存在する.I)切除量の縮小.縮小手術を否定したLCSG報告はその手法に問題を孕みながらも本術式の普及に大きな影響を与えた.しかし相次ぐ日本からの良好な報告に刺激されたかのように,アメリカからも漸く縮小手術―区域切除―を肯定する論文が現れ始めた.II)切開創の縮小.長い間,大きな創こそ手術の基本と考えられてきたが,VATSの普及および手術例の早期化は手術を劇的に変えた.本法には直視を加える方法と完全鏡視下の方法がある.既に開胸下の標準的な葉切除を習得している外科医がVATS下の同一手術の実施に2度目のlearning curveを必要とするのであれば,そこには合理的な説明が求められる.III)郭清の縮小.縦隔郭清の意義は早期例の増加とともに変わってきた.本邦の現コンセンサスはa)GGO率,TDRが100%に近ければ郭清を省く.葉気管支周囲の郭清も不要である.b)上葉肺癌における#7リンパ節の郭清意義は限定され,上縦隔に転移リンパ節を認める中下葉肺癌の予後は不良である,の2点である.臨床病期I期例の増加と手術器具の発達および保存療法の進歩は手術例における病期比率に大きな影響を与えた.III期症例の手術機会は減少し,その上に訴訟などの社会的な要因が加わり,拡大手術は以前ほど実施されていない.しかし進行癌の絶対数は依然として多いので拡大手術の重要性は今後も変わらないであろう.現代の呼吸器外科専門医には増え続ける早期癌と減らない進行癌の両者に対する多様なarmamentが求められている.
索引用語:肺癌外科療法, VATS, リンパ節郭清, 縮小手術, 拡大区域切除

肺癌 48 (1):20─25,2008

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