タイトル
第48巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

限局性悪性胸膜中皮腫の1切除例

稲垣 卓也1,2, 佐藤 之俊1,3, 奥村 栄1, 中川 健1, 二宮 浩範3, 石川 雄一3
1癌研究会有明病院呼吸器外科, 2東京慈恵会医科大学外科学講座, 3癌研究会癌研究所病理部

背景.限局性胸膜悪性中皮腫(LMM)は非常に稀な疾患である.その診断,治療は困難であり,びまん性悪性中皮腫(DMM)との関連が解明されておらず,標準治療は確立されていない.症例.58歳男性,会計士,喫煙指数540.健診にて右胸部異常影を指摘され当院紹介受診.画像所見では右側胸壁に境界明瞭で内部不均一な腫瘤影を認め,extra-pleural signを示していた.滲出性胸水を認め,細胞診で悪性所見はなく,ヒアルロン酸26100 ng/mlだった.診断と治療を目的に手術を施行,腫瘍切除,胸壁合併切除(第6,7肋骨切除),肺部分切除を行った.腫瘍は最大径60 mmのLMM二相型であった.術後10ヵ月で胸壁に再発し,胸膜肺全摘術を施行した.結語.LMM根治的切除後再発例に対し胸膜肺全摘術を施行した.再発は単発播種性でDMMとは異なる病態と考えられた.既報告ではLMMはDMMに比較しやや良好な予後が示されている.本症例の治療法の可否を検討するためにも今後症例の積み重ねによる病態の解明および標準的治療法の確立が大きな課題である.
索引用語:限局性悪性中皮腫, 免疫組織化学, 胸膜腫瘍, 二相型中皮腫, アスベスト

受付日:2007年7月10日
受理日:2007年10月29日

肺癌 48 (1):43─50,2008

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