タイトル
第48巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

原発巣の自然退縮中に脳転移が出現した肺大細胞癌の1例

守山 千夏1, 山崎 浩一1, 横内 浩1, 菊地 英毅1, 大泉 聡史1, 西村 正治1
1北海道大学病院第一内科

背景.原発性非小細胞肺癌の自然退縮はまれであり,その機序は不明である.症例.45歳男性.2005年6月胸部異常影を指摘され当院を受診した.胸部CT上左S9に径17 mmの結節影を認め,経気管支生検を施行したが悪性所見が得られず,約半年間の経過で径7 mmにまで縮小したため,それ以上の検査は施行せずに経過観察とした.しかし12月に突然右下肢麻痺が出現し,脳MRI上左前頭葉に径16 mmの腫瘤影を認めた.小開頭脳腫瘍生検を施行し転移性脳腫瘍と診断された.腫瘍はthyroid transcription factor-1(TTF-1)陽性であった.転移性脳腫瘍に対する定位照射後,左S9の結節性病変に対し胸腔鏡下肺部分切除術を施行し,肺大細胞癌と診断された.原発巣,転移巣ともにHLA class Iの高発現と癌包巣内にCD8陽性T細胞の高度の浸潤を認めた.結論.原発巣が自然退縮しながら脳転移をきたした原発性肺大細胞癌を経験した.自然退縮の機序としてCD8陽性細胞の浸潤による免疫反応の関与を交えて考察した.
索引用語:肺癌, 自然退縮, 転移性脳腫瘍, HLA class I, CD8陽性細胞

受付日:2007年9月26日
受理日:2008年1月7日

肺癌 48 (2):112─117,2008

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