タイトル
第48巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

胸膜中皮腫の診断と治療

岸本 卓巳1, 玄馬 顕一1, 西 英行1, 藤本 伸一1, 清水 信義1
1独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院アスベストブロックセンター

胸膜中皮腫の診断には画像診断も重要であるが,確定診断は病理組織標本によって行われる.針生検や胸腔鏡下生検によって得られた腫瘍組織をHE染色のみならず免疫組織化学的な診断手法によって確定診断する.すなわち,上皮型中皮腫陽性マーカーとして,calretinin,WT-1などがあり,陰性マーカーとして,CEA,TTF-1がある.一方,肉腫型では陽性マーカーとして低分子ケラチン(AE1/AE3,CAM5.2),calretinin,陰性マーカーとしては真の肉腫の陽性マーカーであるdesmin,smooth muscle actinなどがある.臨床診断上,胸膜中皮腫と鑑別が必要な疾患として多形型肺癌,偽中皮腫様肺癌,線維性胸膜炎(良性石綿胸水)がある.胸膜中皮腫の治療については,放射線療法が単独では無効のため,治療方法が限定される.IMIG分類のstage IIIまでが胸膜肺全摘出術の適応ではあるが,stage IIIでもリンパ節転移のある症例の予後はよいとは言えない.stage IIIあるいはIVではcisplatin(CDDP)+pemetrexed併用療法が最も有効である.胸膜肺全摘出術,放射線療法,化学療法を組み合わせたtrimodalityの予後が最もよいと報告されているが,performance status(PS)のよい若年症例に限られる.その他に有効な治療方法はない.
索引用語:胸膜中皮腫, 免疫組織染色, 胸膜肺全摘出術

肺癌 48 (3):165─170,2008

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