タイトル
第48巻第3号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (892K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

線毛円柱上皮で裏打ちされ気管支原性嚢胞との鑑別を要した胸腺嚢胞の1切除例―特に血管脂肪リンパ上皮層の存在と免疫組織化学的検索の有用性について―

神谷 紀輝1, 本告 匡2, 西 八嗣1, 嶋根 正樹3, 八十川 要平1
北里研究所メディカルセンター病院 1外科, 2病理, 3内科

背景.縦隔に発生する嚢胞性病変には様々な疾患が存在するが,嚢胞壁に配列する上皮や構成成分を丹念に確認することが,病変の病理組織診断に役立つ.症例.胸部異常陰影で精査となった59歳,男性.画像では上縦隔の左右腕頭静脈に挟まれた領域に径4 cm大の単房性の嚢胞性腫瘤を認めた.右開胸アプローチにて,一部嚢胞壁が残存するも嚢胞摘出術を施行し,緊満した壁の薄い単房性の嚢胞が左右腕頭静脈血管に挟まれるように存在していた.病理組織学的には,嚢胞壁の内面は単層の線毛円柱上皮で覆われ,周囲の脂肪織内に一部退縮胸腺組織と思われる構造が認められた.免疫組織学的検索では,線毛円柱上皮の下層に血管・脂肪織に加え胸腺上皮細胞や未熟胸腺Tリンパ球を含む層が確認され,胸腺嚢胞との診断が可能であった.結論.ほとんどが線毛円柱上皮で裏打ちされ,気管支原生嚢胞との鑑別を要した胸腺嚢胞症例を経験し,(1)嚢胞壁における高度に菲薄化した胸腺組織は,薄い血管脂肪リンパ上皮層(vasculo-adipo-lympho-epithelial(VALE)layer)として存在すること,(2)胸腺組織の証明には免疫組織化学的な検索が有用であることを学んだ.
索引用語:縦隔嚢胞性病変, 単房性胸腺嚢胞, 線毛円柱上皮, 気管支原性嚢胞, 免疫組織化学

受付日:2007年11月3日
受理日:2008年3月5日

肺癌 48 (3):197─201,2008

ページの先頭へ