タイトル
第48巻第3号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (1044K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

傍腫瘍性辺縁系脳炎による健忘症状が発見の契機となった肺小細胞癌の1例

瀧 玲子1, 千葉 佐保子1, 杉浦 真貴子1, 返田 常広1, 西条 直子1, 吉澤 正文1
1武蔵野赤十字病院呼吸器科

背景.傍腫瘍性神経症候群の一病型である傍腫瘍性辺縁系脳炎は,悪性腫瘍の稀な合併症であり,神経症状が先行することが多く,診断困難な場合が多い.症例.64歳男性.急速に健忘が出現したため来院した.脳MRI T2強調画像,fluid attenuated inversion recovery(FLAIR)像にて両側海馬に高信号域を認め,辺縁系脳炎が疑われた.原因を精査し,同時期の胸部CTで右肺S8に腫瘤影を認め,気管支鏡検査にて肺小細胞癌cT2N2M0,stage IIIA限局型と診断した.健忘については傍腫瘍性辺縁系脳炎と診断した.抗Hu抗体は陰性であった.化学療法と胸部放射線照射療法を同時併用し腫瘍の縮小を認め(partial response:PR),健忘症状もある程度改善した.発症後23ヶ月までPRを維持している.結論.本症例での傍腫瘍性辺縁系脳炎では,早期診断・治療及び抗Hu抗体が陰性であったことなどが症状の改善につながった要因と考えられる.原因不明の神経症状をみた場合,傍腫瘍性神経症候群である可能性も念頭に置き悪性腫瘍の有無を精査することが重要である.
索引用語:傍腫瘍性辺縁系脳炎, 肺小細胞癌, 傍腫瘍性神経症候群, 抗Hu抗体

受付日:2008年1月16日
受理日:2008年3月12日

肺癌 48 (3):202─208,2008

ページの先頭へ