タイトル
第48巻第4号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (638K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

血液透析患者に発症した肺腺癌に対してweekly Carboplatin+Paclitaxel併用療法が奏効した1例

広瀬 敏幸1, 中川 靖士1
1国立病院機構東徳島病院呼吸器外科

背景.今後,透析患者に対する化学療法の必要性は増加するものと思われるが,確立された投与方法はなく,さらなる検討が必要である.症例.患者は75歳,男性.慢性腎不全のため,65歳より血液透析を施行中であった.2005年4月の定期胸部X線にて右肺門部の淡い陰影を指摘された.胸部CTにて右上葉にair bronchogramを伴う浸潤影を認めた.腫瘍マーカーではシフラ87 ng/mlと上昇を認め,気管支鏡検査による擦過細胞診にて腺癌と診断された.右中下葉に肺内転移を認め,T2N1M1 stage IVと診断し,化学療法を施行した.Carboplatin(CBDCA)をAUC 2.0,Paclitaxel(PTX)を70 mg/m2としday 1,8,15に投与し,28日毎の投与とした.投与終了2時間後より4時間の透析を行った.副作用としては,grade 2の食欲不振,悪心,脱毛,grade 3の好中球減少,貧血および発熱性好中球減少を認めた.2コースめよりCBDCAをAUC 1.68,PTXを65 mg/m2と減量して施行し,症状および陰影の改善を認め,シフラは正常値まで低下した.3コースめに血中濃度を測定し,CBDCAの血液動態はAUC 1.16 μg-min/ml,PTXはAUC 3.49 μg-h/mlであった.合計4コース施行し,経過観察していたが,再び陰影の増悪を認め,2006年9月に死亡された.結論.血液透析患者に発症した肺腺癌に対してweekly CBDCA+PTX併用療法が奏効した1例を経験したので報告した.透析患者に対し,外来にて安全に投与できた.
索引用語:血液透析, 肺腺癌, Carboplatin, Paclitaxel

受付日:2008年1月9日
受理日:2008年5月30日

肺癌 48 (4):285─289,2008

ページの先頭へ