タイトル
第48巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

原発性肺癌に対する完全鏡視下肺葉切除術(VATS lobectomy)の習熟過程

山下 芳典1, 向田 秀則1, 江川 博彌2, 村井 博2, 濱井 宏介2, 金子 真弓3
広島市立安佐市民病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理

目的.VATS lobectomyの手技の明確な定義と,それに沿う研修と経験は術式の標準化には欠かせない.完全鏡視下肺葉切除術の基本となる習熟の過程に検討を加える.対象と方法.cStage IAの非小細胞肺癌連続80例を対象とし,25年以上経験のある呼吸器外科専門医が参加し,2名の何れかが術者を務めた.周術期に関する諸因子について前半と後半の症例の間で比較検討した.結果.前半と後半の対象症例の背景因子に差はなかった.前半40例,後半40例の順に,平均値(p値)で示す.有意差を生じたのは,手術時間 253,195分(<0.0001),術中出血量 143,94 g(0.009),皮膚創長4.0,3.4 cm(0.0064),術後在院期間 8.0,6.9日(0.0098)であった.胸腔ドレーン留置期間は後半で短縮し(0.048),総排液量は減少傾向にあった.術後合併症,特に遷延性肺瘻の発生率は後半では低下傾向にあった.縦隔リンパ節郭清個数に差はなく,開胸へは同程度に移行した.後半では手術時間が4時間,術中出血量が100 gを超える症例が減少した.結語.本法は,開胸下の手術に熟練した呼吸器外科医が20~30例を経験すると,手術の質が確保されながら手技に改善がみられた.
索引用語:原発性肺癌, 胸腔鏡下肺葉切除術, 学習曲線

受付日:2008年2月18日
受理日:2008年7月8日

肺癌 48 (6):681─687,2008

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