タイトル
第48巻第6号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (335K)
Article in Japanese

─ 原著 ─

肺癌による癌性髄膜症の臨床的検討―髄腔内化学療法の有効性の考察―

杉本 幸弘1,3, 千場 博1, 藤井 慎嗣1, 古川 絵梨1, 蔵野 良一2, 加瀬 勝一3
熊本地域医療センター 1呼吸器科, 2病理部, 3自衛隊福岡病院内科

目的.原発性肺癌による癌性髄膜症に対して髄腔内化学療法の有無,投与期間,髄液細胞診の推移,症状の変化および生存期間(癌性髄膜症の診断から死亡まで)の検討から,髄腔内化学療法の意義につき考察した.対象.2000年5月~2007年5月の約7年間に当施設で経験した700例の肺癌患者のうち癌性髄膜症を発症した17例を対象とした.結果.17例中16例は初回の髄液細胞診が陽性で1例は2回目の細胞診で陽性であった.17例中13例にはMethotrexate(MTX)髄注(0.15~0.3 mg/kg,1~2回/週)が行われた.髄腔内化学療法を実施するか否かの判断は髄液細胞診が陽性で,患者あるいは患者に判断能力がない場合は家族の同意を得られた場合とした.投与期間は7日から5ヶ月であった.髄注開始後の髄液細胞診は17例中6例に陰性化を認め,そのうち5例は2回以上連続で陰性化が認められた.症状の改善は17例中9例であった.その9例のうち髄液細胞診の陰性化が一度も認められなかったのは3例,髄液細胞診の1回のみの陰性化が1例,2回以上の連続陰性化が5例であった.生存期間は2回以上連続で髄液細胞診の陰性化が認められた症例では4~5ヶ月と長期であった.結論.肺癌による癌性髄膜症に対する髄腔内化学療法は,症状の改善および生存期間の延長に寄与する可能性があると考えられた.
索引用語:癌性髄膜症, 肺癌, メトトレキサート, 髄腔内化学療法

受付日:2008年3月24日
受理日:2008年7月25日

肺癌 48 (6):688─692,2008

ページの先頭へ