タイトル
第48巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

右肺全摘後に2回の左肺部分切除を施行した異時性多発肺癌の1例

片岡 和彦1, 藤原 俊哉1, 松浦 求樹1, 妹尾 紀具1
1広島市立広島市民病院呼吸器外科

背景.肺全摘後の肺癌に対する対側肺切除についての報告は少なく,そのほとんどは1回の再切除の報告である.症例.45歳男性で,胸部異常影にて入院した.CTにて,右主気管支への壁浸潤を伴うS6原発の腫瘍を認めた.右肺全摘とND2aのリンパ節郭清を施行した.病理学的には,扁平上皮癌で,pT3N1M0 Stage IIIAであった.5年後,CTにて左下葉に腫瘤影を認めた.呼吸機能は,2回目の手術に十分な程度保持されており,左肺下葉の部分切除を施行した.16 mmの扁平上皮癌と診断され,Martiniらの診断基準により異時性多発癌とした.さらに3年8ヶ月後のCTにて,左上葉のbullaに接して腫瘤影が出現し,FDG-PETで弱い集積を認めた.混合性呼吸機能障害を認めるも,PSは良好であり,3回目の手術を希望された.左肺上葉部分切除を施行し,病理にて15 mmの腺癌と診断された.術後経過は良好であった.術後PSの低下を認めるも,日常生活に支障なく,術後1年5ヶ月の現在再発を認めていない.結語.右肺全摘後に2回の左肺部分切除を施行した,異時性多発肺癌の症例を経験した.積極的な手術が,初回手術より10年という長期生存につながっていると考えられた.
索引用語:肺全摘, 残存肺, 異時性多発肺癌, 呼吸機能

受付日:2008年5月2日
受理日:2008年9月10日

肺癌 48 (7):816─820,2008

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