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第49巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第23回肺癌集検セミナー ─

石綿曝露の病理学的評価

廣島 健三1, 由佐 俊和2, 篠原 也寸志3
1千葉大学大学院医学研究院診断病理学, 2千葉労災病院呼吸器外科, 3労働安全衛生総合研究所環境計測管理研究グループ

目的.乾燥肺1 gあたり1,000本以上の石綿小体濃度がある場合は石綿に曝露されている.5,000~15,000本の石綿小体が存在する場合は,肺癌が発生する危険率を2倍に上昇させる.組織切片の鉄染色による石綿小体の数と,石綿小体濃度の関係を比較し,切片上の石綿小体の数で石綿の曝露が評価できるか検討した.方法.手術あるいは病理解剖により肺組織を摘出した,石綿曝露を受けた可能性のある肺癌および特発性間質性肺炎,中皮腫,石綿肺の各症例を,鉄染色によるスライドガラス1枚あたりの石綿小体の数を測定した.また,肺組織を次亜塩素酸ソーダで溶解し,濾過した標本を位相差顕微鏡で観察し,乾燥肺1 gあたりの石綿小体濃度を測定した.結果.溶解法による石綿小体濃度と,切片中の石綿小体の数には相関がある.7本以上の石綿小体を認める場合は,高度の石綿曝露を受けている.結論.切片に1本の石綿小体を認めれば,一般の人よりも高濃度の石綿曝露を受けている.7本以上認めれば,高度の石綿曝露を受けている.しかし,切片に石綿小体を認めなくとも石綿曝露を受けていることがあり,切片での石綿小体の有無の評価には注意が必要である.
索引用語:石綿, 石綿小体, 肺癌, 中皮腫, 石綿肺

肺癌 49 (1):48─57,2009

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