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第49巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第23回肺癌集検セミナー ─

良性アスベスト関連疾患の胸部画像所見は中皮腫高罹患リスクの指標か?

中野 孝司1
1兵庫医科大学内科学呼吸器RCU科

中皮腫はアスベストの低濃度環境曝露でも発生し,アスベスト工場周辺住民の中皮腫相対危険率が高いことが示され,先進諸国では大きな社会問題になっている.一般住民を対象にアスベスト検診が始まっているが,検診の第一の目的は胸膜中皮腫とアスベスト肺癌の発見である.アスベスト曝露者には,胸膜プラーク,びまん性胸膜肥厚などの良性アスベスト関連所見が認められるが,このような良性のアスベスト関連所見を認める症例は,中皮腫高罹患群であるとする報告とそうではないとする報告の相反する結果がある.胸膜プラークなどの良性所見は,アスベスト曝露を受けた明らかな証拠となり,アスベスト検診での位置付けは高い.最近,西オーストラリアWittenoomの青石綿工場の元従事者と元住民に対する癌化学予防のコホート調査で,どのようなアスベスト関連所見が中皮腫につながるかが検討された.その結果,胸膜中皮腫に関しては,胸膜プラークを含む何れのアスベスト関連所見も関連性はなく,石綿肺とびまん性胸膜肥厚が腹膜中皮腫の罹患リスクに関係していることが示されている.良性アスベスト関連所見の今後の科学的な評価は極めて重要である.
索引用語:中皮腫, アスベスト, 胸膜プラーク, スクリーニング, 石綿肺

肺癌 49 (1):78─82,2009

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