タイトル
第49巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺胞蛋白症寛解後に発症した肺癌の1例

石田 順造1, 古川 欣也1, 山口 学1, 齋藤 誠1
1東京医科大学霞ヶ浦病院呼吸器外科

背景.肺胞蛋白症は稀な疾患であり,肺癌との合併例の報告は少ない.今回我々は肺胞蛋白症診断後長期間経過し,肺癌を合併した症例を経験したので報告する.症例.66歳の男性.検診胸部X線異常陰影にて近医より紹介初診.両側肺にびまん性のスリガラス~顆粒状陰影を認め,経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)を施行し,肺胞蛋白症の診断を得た.無症状であったため,経過観察を行うも,初診より約1年後,呼吸困難感を訴え紹介医受診.低酸素血症を認め当科転入院.集中治療室にて全身麻酔下全肺胞洗浄法施行後,気管切開下に局麻下肺胞洗浄を繰り返し,寛解を得た.その後肺アスペルギルス症に伴う喀血にて入退院を繰り返すも,抗真菌薬の投与にて一時軽快した.しかし,5年半後再度血痰を認め再診.CT上左S3に空洞性病変を,また左S9には径40 mm大の腫瘤影を認め,肺癌合併を疑った.精査の結果,非小細胞肺癌(cT3N0M0,stage IIB)の診断にて左下葉切除+横隔膜合併切除+左上葉部分切除(アスペルギローマを切除)+リンパ節郭清(ND2a)を行った.結論.肺癌患者の多くは肺胞マクロファージの機能不全を認める.肺胞蛋白症患者は肺癌のハイリスク群である可能性があり,肺胞蛋白症寛解後も注意深い長期間の経過観察が必要である.
索引用語:肺胞蛋白症, 肺癌, 肺胞マクロファージ, 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)

受付日:2008年9月1日
受理日:2008年11月17日

肺癌 49 (2):193─197,2009

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