第49巻第3号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
ウロキナーゼの胸腔内注入が有効であった肺膨張不全の1例
田内 俊輔1, 田根 慎也1, 北村 嘉隆1, 内野 和哉1, 岩永 幸一郎1, 吉村 雅裕11兵庫県立がんセンター呼吸器外科
背景.癌性胸膜炎による胸水貯留は胸腔ドレナージ施行後も肺が十分に再膨張しないことがあり,そのコントロールに難渋することがある.今回,我々は癌性胸膜炎による膨張不全肺に対して,ウロキナーゼの胸腔内注入を行い良好な肺の再膨張を得られた症例を経験したので報告する.症例.56歳女性.左乳癌術後経過観察中に左胸水の出現を認めた.その後胸水の著明な増加と労作時の呼吸困難が出現したため,当院乳腺科入院となった.胸腔ドレナージの後に胸膜癒着術が施行されたが,肺の膨張は不十分で胸腔内に多房性の胸水貯留が認められた.フィブリン溶解を目的としてウロキナーゼが胸腔内に投与された.その結果,形成されていた多房性の胸水は消失し良好な肺の再膨張が得られた.その後,再度胸膜癒着術が施行された.患者は約7ヶ月後に癌死となったが,その間胸水の再貯留を認めることなく安定した呼吸状態を保ち,自宅での生活が可能であった.結論.癌性胸膜炎に対するウロキナーゼの胸腔内注入は,trapped lungに対する治療法として有用であった.
索引用語:肺癌, 癌性胸膜炎, Trapped lung, ウロキナーゼ
受付日:2008年12月16日
受理日:2009年2月20日
肺癌 49 (3):313─316,2009