第49巻第4号目次 | Japanese/English |
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─ 総説 ─
非小細胞肺癌におけるWntシグナルの過剰発現とその制御への試み
黄 政龍1, 劉 大革1, 門田 球一1, 中野 淳1, 石川 真也1, 山本 恭通1, 横見瀬 裕保11香川大学医学部呼吸器・乳腺内分泌外科
Wntシグナルは発生や分化・癌化などに広く関わっている.その中で,Wntの過剰発現が多くの非小細胞肺癌のプログレッションでみられることが判明してきた.まず,ヒト癌細胞株に癌転移抑制遺伝子MRP-1/CD9を遺伝子導入すると,Wnt1及びWnt2b,Wnt5a,さらにWnt標的遺伝子の発現に抑制がみられ,Wntシグナルの癌化への関与が示唆された.非小細胞肺癌における臨床的検討では,その89%にWnt1またはWnt2b,Wnt5aの過剰発現がみられた.Wnt1高発現腫瘍では,c-MycやCyclin D1,VEGF-A,MMP-7などのWnt標的遺伝子の腫瘍内発現が高く,腫瘍増殖能も高かった.Wnt2b高発現腫瘍でも,VEGF-Aの腫瘍内発現が高く,腫瘍増殖能が高かった.Wnt5aの腫瘍内発現は,tumor-stromal interactionで間質内VEGF-A発現を誘導し,腫瘍増殖能の亢進と関連していた.Wnt1とWnt5aの過剰発現は独立した予後不良因子であった.以上より,これらのWntを癌治療のターゲットと考え,Wnt抑制遺伝子治療の開発を目指し,shRNA発現アデノウイルスベクターを作製し基礎的研究を現在行っている.
索引用語:Wntシグナル, Wnt1, Wnt2, Wnt5a, 遺伝子治療
肺癌 49 (4):422─426,2009