タイトル
第49巻第4号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (1399K)
Article in Japanese

─ 総説 ─

臨床応用に向けた肺癌のプロテオーム解析

平野 隆1,2, 前田 純一1, 川上 隆雄1,3, 小鹿 雅和1, 垣花 昌俊1, 加藤 靖文1, 野村 春将1, 梶原 直央1, 内田 修1, 大平 達夫1, 池田 徳彦1, 加藤 治文1
1東京医科大学外科学第1講座, 2戸田中央総合病院, 3メディカル・プロテオスコープ

プロテオミクスとは蛋白質の包括的解析と解され,同分野における最近の進歩は外科切除材料や体液などの臨床検体を対象とした解析を可能にした.臨床応用に現在使われている主なプロテオーム技術は2次元電気泳動法と質量分析法である.私たちは2次元電気泳動法と外科切除材料を用いて原発性肺腺癌に特異的なnapsin Aを,また白金製剤による化学療法に対する薬剤耐性関連蛋白としてreticulocalbinを同定した.さらに質量分析法を用いuracil-tegafur(UFT®)による術後補助化学療法を選択するためのバイオマーカー探索を試み,vimentinとmyosin IIAがともに発現していない症例はUFT®の投与なしでも非常によい予後を示すことを明らかにした.プロテオームの技術は肺癌の早期発見のための新しいスクリーニング法や個別化治療の確立に貢献することが期待されているが,臨床検体の解析にはいくつかの技術的な問題点,主としてダイナミック・レンジに関する問題点をまだ残している.解析目的を明確にし,その目的に焦点を合わせたサンプル調整が不可欠と考える.
索引用語:プロテオミクス, バイオマーカー探索, napsin A, reticulocalbin

肺癌 49 (4):427─434,2009

ページの先頭へ