第49巻第4号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
増大傾向を示し肺癌との鑑別を要した円形無気肺の1例
中川 誠1, 菅谷 将一1, 松下 明弘2, 渡橋 剛2, 横井 陽子2, 町田 和彦2独立行政法人労働者健康福祉機構中部労災病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科
背景.円形無気肺は胸膜プラークや良性石綿胸水との関連が示唆されている良性疾患であるが,時に肺癌との鑑別を要する疾患である.症例.59歳男性.11年間石綿作業歴があり,石綿健診時の胸部CTで経時的に増大する左肺S6の結節を指摘された.気管支鏡検査で悪性所見は認められなかったが,SLXやNSEの腫瘍マーカーが軽度上昇していたことから肺癌を否定できず,診断および治療目的にて手術を施行した.術中所見で,側胸部・背側・横隔膜部の胸膜プラークと術前胸部CTで認められた結節の部位に一致した臓側および壁側胸膜の肥厚と癒着を認めたが,明らかな肺内腫瘤は触知しなかった.胸部CT所見と一致する左肺S6を部分切除したが,病理組織学的診断は慢性胸膜炎の所見を認めるのみで悪性所見は認められなかった.これらの所見より円形無気肺と診断し,現在経過観察中である.結論.増大傾向を示し,肺癌との鑑別を要した円形無気肺の1例を報告した.
索引用語:円形無気肺, 肺癌, 石綿
受付日:2009年1月8日
受理日:2009年3月17日
肺癌 49 (4):456─460,2009