第49巻第4号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬が有効であった肺腺癌による髄膜癌腫症の3症例
木田 陽子1, 秦 明登1, 加地 玲子1, 富井 啓介2, 片上 信之1, 石原 享介21先端医療センター診療開発部, 2神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科
背景.肺癌における髄膜癌腫症の予後は,無治療では4~6週,治療した場合でも2~3ヶ月の生存と報告され,きわめて不良である.症例.58歳女性(cT4N0M1;肺内転移),72歳男性(cT4N1M0),68歳女性(cT1N0M1;骨転移)のstage IIIBまたIV期の肺腺癌の3症例である.各種抗癌剤治療中に,神経症状を伴った髄膜癌腫症を発症した.上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKIs)投与が奏効し,神経症状や頭部MRI画像所見と髄液細胞診での改善が確認できた.最長1年を超える生存が得られた.2症例は髄液検体でEGFR遺伝子変異の検索を施行し,ともに陽性であった.変異の有無によりEGFR-TKIsの治療効果を予測できる可能性がある.結語.髄膜癌腫症を合併した非小細胞肺癌3症例について報告した.EGFR遺伝子変異を有する例では髄膜癌腫症に対してEGFR-TKIsが有用であると考えられた.
索引用語:肺癌, 髄膜癌腫症, EGFRチロシンキナーゼ阻害薬, EGFR遺伝子変異
受付日:2008年9月29日
受理日:2009年3月27日
肺癌 49 (4):461─466,2009