タイトル
第49巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

右下葉切除後に,中葉を温存した右上葉切除を施行した原発性多発肺癌の1例

片岡 和彦1, 藤原 俊哉1, 松浦 求樹1, 妹尾 紀具1
1広島市立広島市民病院呼吸器外科

背景.中葉を温存し右上下葉切除を施行した報告はまれである.症例.患者は89歳男性で,検診にて胸部異常影を指摘された.CTにて右肺下葉に不整形腫瘤を認め,上葉に索状影を認めた.気管支鏡にて,右下葉気管支内に腫瘍を認めた.生検にて扁平上皮癌と診断された.上葉の陰影は炎症が示唆された.胸腔鏡補助下の,右下葉切除とリンパ節郭清を施行した.術後病理病期は,pT1N2M0 p0d0E0pm0 stage IIIAであった.術後9か月目に腰痛を認めた.FDG-PETとCTを施行し,右上葉の陰影の増大を認めた.SUV 2.92で,肺癌が疑われた.後側方開胸にて,右上葉切除を施行した.中葉の癒着は,術後の軸捻転を予防するために剥離しなかった.切除標本の病理所見では,pT2N0M0 stage IBの腺癌であった.術後喀痰による中葉の無気肺を合併し,気管支鏡による吸痰を3回必要とした.術後30か月の現在,再発を認めていない.胸部X線写真,CTでは,中葉の気腫性変化を認めず,胸郭の変形,縦隔の偏位は軽度である.肺血流シンチグラムでは,12%の血流を認めている.結語.右下葉切除後に,中葉を温存した右上葉切除は可能である.中葉は機能していると考えられ,温存する価値がある.
索引用語:右上下葉切除, 多発肺癌, 術後肺軸捻転, 18F-fluorodeoxyglucose(FDG)-PET

受付日:2009年2月9日
受理日:2009年3月30日

肺癌 49 (4):472─476,2009

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