タイトル
第49巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

術後補助化学療法中にMRSA膿胸を合併し胸腔鏡下膿胸腔掻爬術と胸腔洗浄により治癒した肺腺癌の1例

片岡 和彦1, 藤原 俊哉1, 松浦 求樹1, 妹尾 紀具1
1広島市立広島市民病院呼吸器外科

背景.肺癌の術後補助化学療法中に膿胸を合併したという報告は少ない.症例.74歳男性がCT上の異常影で当院に紹介された.右上葉切除とND2aリンパ節郭清術を施行した.病理診断はpT4N0M0 p0d0E0pm1 stage IIIBの腺癌であった.carboplatinとweekly paclitaxelによる術後補助化学療法を施行した.4コース目の14日目に高熱にて入院した.胸部X線写真とCTにて多量の右胸水を認めた.胸腔ドレナージを施行し,胸水培養にてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による膿胸と診断された.持続洗浄を施行し,vancomycinを投与した.入院7日目のCTにて,背側及び横隔膜上に胸水を認めた.入院10日目に,小開胸併用胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を施行し,3本のdouble-lumen tubeを留置した.持続洗浄を施行し,vancomycinをlinezolidに変更した.ドレーンは胸水の培養が陰性になった後,順に抜去した.術後47日で退院となった.初回術後22か月の現在,膿胸も癌も再発を認めていない.結語.肺癌術後補助化学療法中に免疫能低下から膿胸を合併する可能性がある.保存的治療により改善しない場合,時期を失せず胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を施行すべきであると考えられた.
索引用語:膿胸, 術後補助化学療法, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA), 胸腔鏡下膿胸腔掻爬術

受付日:2009年1月13日
受理日:2009年5月14日

肺癌 49 (6):863─867,2009

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