タイトル
第49巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

急速な転帰をとった頚髄髄内転移を認めた肺腺癌の1例

名和 公敏1, 野本 靖史1, 木下 孔明1, 中村 祐之2, 池田 徳彦3
船橋市立医療センター 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3東京医科大学外科学第1講座

背景.肺癌の脊髄髄内転移は稀で,治療法も確立されていない.症例.70歳,男性.2008年3月下旬,右下葉原発性肺癌(cT2N0M0病期IB期)の診断にて手術待機中であったが,頚部痛,左上肢のしびれが出現し,さらに4月上旬入院後,両上下肢の完全麻痺と排尿障害が急速に進行した.頚部MRIを施行しC4椎体のT1強調像で低信号を示す病変がみられ転移が疑われた.また,C4レベルに脊髄内にT2で低信号な病変を認めた.症状は急速に進行し診断から2日後,呼吸不全のため死亡した.剖検の結果,腫瘍は低分化腺癌であった.頚椎,頚髄ともに肺と同様の組織像を認めたことより,肺癌の転移と考えられたが頚椎腫瘍と頚髄腫瘍に連続性はなく直接浸潤したものではなかった.それぞれC4レベルに限局した転移巣であり,他臓器への転移は認めなかった.結論.肺腺癌の脊髄髄内転移の1例を報告した.予後は不良であり,治療法に関して一定の見解は認めない.今後の治療法の確定のために,症例のさらなる蓄積が必要であると考える.
索引用語:肺癌, 髄内転移, MRI

受付日:2009年4月20日
受理日:2009年6月8日

肺癌 49 (6):872─876,2009

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