第49巻第6号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
術前約10年の経過を有する粘液産生肺腺癌の1例
宇山 攻1, 先山 正二1, 松岡 永1, 鳥羽 博明1, 滝沢 宏光1, 丹黒 章11徳島大学胸部内分泌腫瘍外科
背景.肺腺癌は他の肺癌組織型と比べslow growing tumorの報告も散見されるが,10年以上の臨床経過を有する報告は少ない.症例.48歳女性.検診にて肝腫瘍を指摘され手術目的で当院受診,術前精査中の胸部CTにて胸部異常影もみつかったため肝腫瘍術後に当科紹介となった.近医にて過去に胸部CT撮影歴があり比較したところ10年前の胸部CTにも同部位に異常影を認めた.先に胸腔鏡下肺部分切除が行われ,術中迅速診断の結果肺癌と診断されたため右中葉切除及びリンパ節郭清(ND2a)を施行した.病理組織結果は粘液産生肺腺癌で最終病理病期はpT1N0M0 stage IAであった.結論.術前約10年という長期の臨床経過を有する肺腺癌の1例を経験した.肺野異常影を認め数年経過の後若干の拡大を認めた場合,緩徐に発育する肺癌もあることを念頭におく必要があると思われた.
索引用語:肺癌, 粘液産生, 杯細胞型, 長期臨床経過
受付日:2009年2月9日
受理日:2009年7月6日
肺癌 49 (6):890─893,2009