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第49巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第23回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─

肺癌におけるmicroRNAの異常と意義

長田 啓隆1,2
1愛知県がんセンター研究所分子腫瘍学部, 2名古屋大学連携大学院細胞工学講座

目的.microRNA(miRNA)は約22塩基のnon-coding RNAで標的遺伝子の発現を抑制し,発生・分化の制御など種々の生物学的機能を果たしている.我々は肺癌に於けるmiRNAの異常と,肺癌の発症・進展への関与を検討した.研究計画.癌に関連する可能性が考えられるmiRNA群を選択し,正常肺・肺癌検体におけるmiRNAの発現を比較検討した.また,miRNAやアンチセンスオリゴを細胞内導入し,miRNAの機能を検討した.結果.let-7ファミリーが肺癌で高頻度に発現低下し,その発現低下が予後不良因子であることが判明した.また,miR-17-92クラスターの過剰発現が見出された.このmiR-17-92クラスターの強制発現で増殖促進が見られ,一方,アンチセンスオリゴによる発現抑制が,miR-17-92クラスターを強発現している肺癌細胞株特異的に増殖抑制・細胞死誘導を引き起こした.結論.let-7ファミリーが癌抑制遺伝子として,また,miR-17-92クラスターが癌遺伝子として機能しており,これらmiRNAの異常が,肺癌の発症・進展に深く関与することが示唆された.他のmiRNAの癌への関与も報告され,今後miRNA発現解析の癌の診断・予後予測への応用や,miRNAを用いた治療・miRNAを標的とする治療などの開発が期待される.
索引用語:肺癌, microRNA, let-7, miR-17-92

肺癌 49 (6):894─901,2009

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