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第49巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第23回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─

Combined transcriptome approachによる肺癌転移関連遺伝子発現パターンと転移関連遺伝子の同定

柳澤 聖1,2, 冨田 秀太1, 高橋 隆1
1名古屋大学大学院医学系研究科附属神経疾患・腫瘍分子医学研究センター分子腫瘍学分野, 2名古屋大学高等研究院

遠隔転移は,癌関連死の主要因であるにもかかわらず,その分子機構については,依然として不明な点が多く,詳細な機構をさらに明らかにする必要がある.我々は,高転移性肺癌細胞株であるNCI-H460-LNM35とその親株由来低転移性肺癌細胞株NCI-H460-N15を用いたゲノムワイド遺伝子発現プロファイル解析を行い,45種類の遺伝子で構成される肺癌転移関連遺伝子発現パターンの同定に至った.さらに我々は,これら45遺伝子に対してジーンオントロジー解析を施行し,肺癌がどのような機構で転移能を獲得するのかに関する検討を加えた.また,肺癌転移関連遺伝子群の中で肺癌術後予後と関連の深い遺伝子群の同定を進めることにより,ホメオボックス遺伝子であるDLX4の同定に至っている.DLX4の発現は,高転移性肺癌細胞株であるNCI-H460-LNM35細胞において低下が認められ,また,低発現症例では,術後予後の短縮と深く関連することが確認されている.さらに,NCI-H460-LNM35を用いて,DLX4の安定発現細胞株を作成し,その機能解析を進めたところ,in vitroの細胞運動能・浸潤能のみならず,in vivoの血行性・リンパ行性転移をも抑制することが確認された.最後に,これまで機能解析のなされていない肺癌転移関連遺伝子の探索を行うことにより,新規肺癌転移関連遺伝子を同定し,肺癌組織におけるその発現増強を明らかとした.我々の進めるcombined transcriptome approachは,非常に有効な解析法であり,肺癌術後予後予測を可能とするなど,臨床的に有用性の高い遺伝子群の抽出のみならず,肺癌転移の分子機構解明へ大きく貢献することが示唆された.
索引用語:肺癌, 転移, 発現プロファイル, マイクロアレイ, ジーンオントロジー

肺癌 49 (6):902─909,2009

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