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第49巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第23回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─

肺癌のEGFR-TKI治療に対するバイオマーカー―EGFR変異以外を中心に―

杉尾 賢二1,2
1産業医科大学第2外科, 2国立病院機構九州がんセンター呼吸器科

上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor)遺伝子変異が,チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI:gefitinib,erlotinib)の治療効果と極めて強い関連があることが示され,一方,EGFR変異以外にも,EGFR-TKIの感受性や耐性を規定する種々のバイオマーカーが報告されてきた.EGFR増幅・コピー数増加は,欧米を中心にバイオマーカーとしての意義が示されてきたが,日本においてはEGFR変異を凌駕するものではない.K-ras変異例でEGFR-TKIに奏効する症例はほとんどなく,本治療に対する耐性のバイオマーカーと考えられる.MET遺伝子増幅・コピー数増加は,EGFR-TKI治療過程で生じ耐性に関与する.EGFR-TKIの適応をより明確にするためには,感受性の高い患者を選択するための効果予測のバイオマーカーを同定・確立することが重要であるとともに,効果が期待できない症例を除外することも,致命的な有害事象を回避する上でも重要である.また,EGFR-TKI治療中の耐性変異のモニタリングも重要で,現在開発中の種々の新規分子標的薬の適応を決定するための有用な遺伝子情報となるであろう.
索引用語:肺癌, バイオマーカー, 上皮成長因子受容体(EGFR), K-ras, MET

肺癌 49 (6):934─938,2009

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