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第50巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

肺癌の分子生物学

豊岡 伸一1, 光冨 徹哉2, 宗 淳一1, 山本 寛斉3, 三好 新一郎1
1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腫瘍・胸部外科, 2愛知県がんセンター中央病院胸部外科, 3独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター呼吸器外科

遺伝子工学の発達は肺癌の分子生物学的異常の解明を可能にしてきた.主だった異常として1980年代から2000年にかけてP53KRAS遺伝子変異から染色体のloss of heterozygosity,癌関連遺伝子のDNAのメチル化などが精力的に研究された.2004年には非小細胞肺癌,特に腺癌において,oncogene addictionを引き起こす上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異が発見され,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の感受性と強く関連することからEGFR並びに,他のEGFRファミリー遺伝子の下流に位置する遺伝子について多くの知見が得られた.また2007年にはEML4-ALK融合遺伝子の存在が非小細胞肺癌で発見され,EGFR-TKIと同様,この遺伝子転座を有している肺癌にはALK阻害剤が著効することが明らかになりつつある.これらの発見は,分子生物学の成果が直接,臨床腫瘍学の発展や肺癌患者の生存率の向上に直結することを如実に示している.本稿では進歩著しい肺癌,特に非小細胞肺癌における分子生物学の現在までの知見や今後の可能性について概説する.
索引用語:肺癌, 非小細胞肺癌, 分子生物学

受付日:2010年2月26日
受理日:2010年6月18日

肺癌 50 (4):329─341,2010

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