タイトル
第50巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺扁平上皮癌に対する放射線治療5年後,照射野内に発生した肺小細胞癌の1例

松井 千里1, 河野 朋哉1, 寺田 泰二1, 花谷 崇2, 砂留 広伸2, 野口 哲男2
市立長浜病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科

背景.癌治療の進歩により,治療後の生存期間が延長し,第二,第三の癌に罹患する可能性が出てきた.中でも放射線治療後に出てくる第二癌である放射線誘発癌が報告されるようになってきた.症例.喫煙歴のある77歳女性.2004年7月に肺扁平上皮癌(cT4N2M0,stage IIIB)と診断され,carboplatin+paclitaxel(CBDCA+PAC)による化学療法4コースと63.6 Gyの放射線療法が施行された.治療の結果partial response(PR)であり,以後再燃なく外来で経過観察が行われていた.2009年6月に胸部X線写真および胸部CTで放射線治療後の器質化部分の拡大を認め,気管支鏡検査で肺小細胞癌と診断された.第一癌が再燃なく,組織型が異なり,放射線の照射野内に発生し,放射線照射から発癌までに5年経過しているということから,放射線治療後に発症した肺小細胞癌と診断し,放射線誘発癌である可能性が高いと考えられた.結論.放射線誘発癌は潜伏期間が長く,放射線治療症例は治癒症例でも長期の経過観察が必要である.
索引用語:放射線誘発癌, 放射線治療

受付日:2010年5月31日
受理日:2010年9月22日

肺癌 50 (7):912─915,2010

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