タイトル
第51巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺癌を合併したリンパ脈管筋腫症の2例におけるTSC遺伝子異常の検討

澤田 貴裕1, 林 大久生2, 熊坂 利夫3, 武内 健一4, 平野 春人4, 大浦 裕之5, 半田 政志5, 冨地 信和6, 小野 貞英6
1愛媛県立中央病院呼吸器外科, 2順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学講座, 3日本赤十字社医療センター病理部, 岩手県立中央病院 4呼吸器内科, 5呼吸器外科, 6病理診断センター

背景.リンパ脈管筋腫症(LAM)は腫瘍抑制遺伝子TSCの異常によって発症し,リンパ管の新生能を有することが知られている.肺癌を合併するLAMは稀である.症例.症例1:64歳,女性.右上肺野に腫瘤影を指摘され,また両肺に多発性嚢胞陰影がみられた.切除肺組織では,右S1~S3の肺癌(腺癌)と2群リンパ節に転移を認めた.また,多発性嚢胞性病変はLAMと診断された.さらに,微小結節性肺胞上皮過形成(MMPH)の像もみられた.遺伝子解析では,LAMおよびMMPHの病変部にTSC1遺伝子の異常が確認された.症例2:73歳,女性.左肺S3とS6に腫瘤影を認め,また両肺に多発性嚢胞陰影がみられた.切除肺組織では,肺の重複癌(いずれも腺癌)と2群リンパ節に転移がみられた.また,多発性嚢胞性病変はLAMと診断された.遺伝子解析では,一方の肺癌とLAMの病変部にTSC2遺伝子異常を認めたが,それぞれの遺伝子パターンは異なっていた.結論.肺癌とLAMが併存した稀な2症例を報告した.肺癌の発症にTSC遺伝子異常が関与している可能性は低かった.
索引用語:リンパ脈管筋腫症, 肺癌, リンパ管新生, リンパ節転移, TSC遺伝子

受付日:2011年1月11日
受理日:2011年3月2日

肺癌 51 (3):193─201,2011

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