タイトル
第51巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺腺癌を合併した肺ノカルジア症と術後に診断されたHIV陽性患者の1例

上野 克仁1,2, 田中 真人1, 河野 千代子3, 在間 未佳3, 山田 嘉仁3, 山口 哲生3
1JR東京総合病院呼吸器外科, 2東京大学医学部呼吸器外科, 3JR東京総合病院呼吸器内科

背景.肺ノカルジア症は比較的まれな非特異的臨床像を呈することから早期診断は必ずしも容易ではない.術後診断で肺腺癌を合併した肺ノカルジア症と判明したHIVキャリアという,稀少例を経験したので報告する.症例.59歳男性.健診発見の左肺上葉異常陰影.経過中発熱や炎症反応の上昇を認めず,精査にて起因菌は同定されなかった.細胞診は陽性であり左主肺動脈浸潤を伴う腺癌(cT4N1M0 stage IIIA)と診断された.化学療法を1コース施行後PRが得られycT2bN1M0 stage IIBの状態となり手術の方針とした.術直前にHIV陽性と診断されたが感染徴候なくCD4値は維持されていた.当初左上葉切除を予定していたが,主肺動脈中枢側や胸壁へ病変が浸潤していたために胸壁切除を伴う肺全摘とせざるを得なかった.病理検査並びに遺伝子解析にて,腺癌病変をわずかに認めるが大半はノカルジアに起因する壊死性肉芽腫であると診断された.結論.炎症,腫瘍の鑑別に難渋する肺病変に対しては,炎症と腫瘍の合併の可能性も考慮し治療開始前に組織診断を着実にすべきである.肺ノカルジア症の菌種同定には遺伝子解析が有用である.
索引用語:肺ノカルジア症, HIV, 肺腺癌

受付日:2010年11月8日
受理日:2011年4月11日

肺癌 51 (3):217─221,2011

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